ヨドの話

1/6
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ

ヨドの話

ヨドは目を開き、体の向きを変えた。 体は疲れきっているはずなのに、妙に頭が冴えて眠れない。 昼間の光景を思い返す。 今日も墓が暴かれ、無くなっていた。 ヨドが埋めた屍が。 最近、ヨドの弔いを何物かが阻んでいる。 大きないびきが聞こえ、ヨドはそちらに目を向けた。 この草庵では大人四人と子供六人が身を寄せ合って暮らしている。 簡単に編まれた藁をかぶり、体を丸め、互いに暖を取り合うように眠っている。 ヨドはいつも彼らの輪から外れ、戸口の近くでぽつんと体を休めている。 寝息がひとつ止んだ。 壮年の男が一人、ゆっくりと体を起こし、立ち上がる。 そして、迷いなく戸口に向かって行く。 男が横を通り過ぎる瞬間、ヨドは男と目が合った気がした。 頬が削げた男の、落ち窪んだ目の奥の感情は読み取れなかった。 男はそのまま闇に吸い込まれるように外へ出て行く。 冷たい隙間風に、ヨドは身震いした。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!