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最近、土地の主の厳しい取り立てに苦しみ、耐えられず山で命を絶つものが後を絶たない。
彼らを人知れず弔うのが、ヨドの日課だった。
日の出を待ち、ヨドは今日も山へ向かう。
美命山と言われるこの山は、立ち姿が美しい松や檜が山中に生い茂っている。
荘厳で美しく、不気味なほど静かなこの山は、古くから命を司る神が住むと言われていた。
ヨドは小さな足でゆっくりと土を踏みしめる。
もう冬も近いというのに、青々とした葉の木々達が思い切り両手を広げている。
ここは季節で色を変える木はない。
まるで永遠の時を手にしたような空間だった。
ヨドは他所の弔いの為だけに山に来ているわけではなかった。
半年ほど前、ヨドの両親もこの山に入り、村に戻らなくなった。
ヨドのせいだった。
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