ヨドの話

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翌朝、ヨドはその場所に戻ると、母子の屍はまだ近くにあった。 流されて岩に引っかかっていた二人は、なぜか穏やかに眠っているような顔をしている。 ヨドは近くの柔らかい土をさがし、二人が入れるくらいの穴を掘った。母子をそこに埋め、小石を重ねてやった。 力のある人は、大きな石をもっと重ねて立派な墓を作ると聞いたことがあるが、ヨドには慰め程度しか作れない。 だが、ヨドの気持ちは落ち着き、広がった心の穴にわずかな幸福感が湧き上がった。 誰にも看取られなかった最期の姿を、ヨドは弔ってやったのだ。 それからヨドは山に毎日入って両親を探し、屍を見つけると、近くに墓を作ってやるようになった。 ところがここ最近、埋めたはずの屍が何故か無くなってしまう。 最初は獣が荒らしたかと思ったが、まるで屍だけ移動したかのように、穴の形は綺麗に残っている。 そもそも、獣自体、ヨドはこの山でまだ見たことがなかった。
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