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ユタは犬から視線を外し、松の木に寄りかかる男の屍に向かい、その顔をのぞき込む。
今日もいい顔をしている。
カラの顔だ。
何にも囚われず、解き放たれた顔。
しかし、それは同時に死を喜び受け入れる顔でもあった。
生前、苦悶してきた証拠だ。
ユタはこの顔を見る度に胸が潰れそうになる。
鼻からゆっくりと息を吐き、近くに置いてあった土器を手にした。
注ぎ口に鮮やかな紅い漆が彩られた壺形の土器には、中にたっぷりの赤黒い液体が入っている。
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