哀しみの閃光

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両手で持ち上げ、中の液体を屍の頭からかけようとした時、突然、犬が興奮し飛び掛かってきた。 吠えているつもりなのか、ふがふがと荒い息がかかるが、上手く声が出ていない。 ユタが乱暴に振り払うと、犬は草むらに勢いよく落ちた。 手に持った土器を抱え直し、屍の頭から一気に液体を流す。 どろりとした粘り気のあるそれが屍にふれると、一瞬、あたりが闇に包まれた。 そして、屍の体の奥底から、脳を貫くような奇声が放たれる。死んだものにしか出せない、全身が泡立つような哀しみの叫びだった。その叫び声に合わせ、緑色の閃光が走る。屍は猛烈な異臭を放ちながら沸騰するように泡を吹き始め、体が溶けていく。 やがてそこにあった体はなくなり、ぽっかりと穴の形だけが残った。
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