0人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
ヨドの話
ヨドは目を開き、体の向きを変えた。
体は疲れきっているはずなのに、妙に頭が冴えて眠れない。
昼間の光景を思い返す。
今日も墓が暴かれ、無くなっていた。
ヨドが埋めた屍が。
最近、ヨドの弔いを何物かが阻んでいる。
大きないびきが聞こえ、ヨドはそちらに目を向けた。
この草庵では大人四人と子供六人が身を寄せ合って暮らしている。
簡単に編まれた藁をかぶり、体を丸め、互いに暖を取り合うように眠っている。
ヨドはいつも彼らの輪から外れ、戸口の近くでぽつんと体を休めている。
寝息がひとつ止んだ。
壮年の男が一人、ゆっくりと体を起こし、立ち上がる。
そして、迷いなく戸口に向かって行く。
男が横を通り過ぎる瞬間、ヨドは男と目が合った気がした。
頬が削げた男の、落ち窪んだ目の奥の感情は読み取れなかった。
男はそのまま闇に吸い込まれるように外へ出て行く。
冷たい隙間風に、ヨドは身震いした。
最初のコメントを投稿しよう!