プロローグ

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プロローグ

 空を踏んだ。  抜けるような青と立ちあがる入道雲を私の足がたしかに踏んでいた。  それはほんの一瞬、時間にしてみれば一秒間にも満たないような時間だったのかもしれない。次の瞬間には私はアスファルトに無様に転がっていたのだから。  強打した背中のあちこちが痛むのを他人事のように感じながら、走り寄ってくるシショーの足音の振動を背中で聞きながら、私は空に向かって手を伸ばす。  あの一瞬。  地面に縛りつける重力から、私は、自分自身の力で自由になった。 「ハレ」  私は大嫌いだった自分の名前をつぶやく。 「あんた、意外とそんなに悪くない」  たぶんあの瞬間が、私が私を許せた、十四年の人生で初めての瞬間だった。
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