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莉里の名の一部を表す『ジャスミンの花』をモチーフとしたダイヤモンドがリングの中央で輝きを放っていた。花の細部まで表現されたデザインで、華やかさと輝きの中に温かみも感じる。そしてダイヤモンドのサイドには小さなシトリンがセットされている。シトリンの宝石言葉は『希望・自信』そして『初恋』
「一之宮莉里さん。……生涯かけて、きっと幸せにします。どうか……僕と結婚してください」
12年前のあの日――二人は目が合った瞬間、恋に落ちた。お互い、一目ぼれだった。
初恋同士だった。けれど、思いを伝えあうことが出来ずにいったんは離れ離れになってしまった。
再会できたのは偶然だったのか、運命だったのかはわからない。
けれど、侑李の名前が書かれた診察衣を見つけなくても、きっと別のどこかで出会えていた気がする。
「はい。……末永くよろしくお願いします」
莉里はゆっくりと頷く。そして左手を侑李に向けて差し出した。
侑李は優しくその手を取り、そして薬指に指輪をはめてくれた。
笑顔でいよう。そう思っていた。
けれど指輪をはめてもらった瞬間、莉里は涙を流していた。
そして知った。悲しみの涙をこらえることはできるが、喜びの涙を抑えることは難しいことを。
こうして、莉里と侑李の恋物語は終わりを迎えた。
「愛してるよ、侑李」
そう、
この物語は恋から愛へと変わり、そして新たな物語を紡いでいく――。
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