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「そもそもさぁ、飼うっていう行為自体が人間都合じゃん。今更でしょ」
「……極論だよ」
「じゃあ、良いの? ずっとこのままで。嫌だ、嫌い、鬱陶しいって、面と向かってハッキリ言えるなら良いと思うけど」
私は黙り込む。彼女の言い分に納得したからじゃなく、これ以上何か言っても堂々巡りだと思ってしまうからだ。
それに面と向かって、嫌だと言えないのは確かだった。だからこそ、こんな回りくどい提案を無碍には出来ずにいる。
元彼とは高校三年の時に塾で知り合って、お互いに初めての恋人だった。思い入れがあるのも分かるけれど、別れて数ヶ月経つのに執着させるのも正直迷惑だった。執着心の強い彼にほとほとついていけなかったことも、別れた原因の一つでもあった。
「ものは試し。私の知り合いのブリーダーに聞いてみるよ」
そう言って、美希は早速スマホを耳に当てる。同じ大学二年生にも関わらず、美希は私の何倍も交友関係が広い。どこでどう知り合っているのか、今だに謎だった。
まだ納得していないし、了承すらしていない。だけど私は重たい溜息を吐いてから、自分のスマホで母親に連絡をした。
犬を飼おうと思っているだなんて、突拍子もない話を母はどう思うのか。考えるだけで気が重い。
目の前で美希は「ひっさしぶりー実はさぁ」と意気揚々と話している。
相談する相手を間違えているのかもしれないと、何度となく思った事もある。それでも、行動を起こせずに手をこまねいている私よりも、何でもすぐに行動を起こせる美希を私はどこかで頼りにしていた。
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