私は犬が嫌いだった

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 犬を飼ったら?  親友の一言に、私はあからさまに不快感を顔に出した。  いくら元彼にストーカーをされていて、唯一の共感点が犬が嫌いという部分だからといったって、飼うという選択肢に至るはずがない。 「犬を連れてさえいれば、アイツは近づけないじゃん」  名案だとばかりに声を上げる美希は、ストローの先を私に向けた。軽くコーヒーが飛んだけど、テーブルに落ちただけで私にまで届かなかったのが救いだ。 「でも、私も犬嫌いだし」  納得しかけたけど、私は首を横に振った。四六時中一緒だなんて耐えらるはずがない。 「でもさぁ、賢い犬なら大丈夫じゃない? 大型犬とか警察犬になるって言うし」 「大型犬なんて、飼えるわけないじゃん。それに家族だって良いっていうかどうか」  実家が一軒屋と言っても、ペットを飼ったことがない。両親が良いと言わなければ、勝手な事は出来なかった。  美希は少し抜けている。思慮が浅いというか、軽はずみな意見が多かった。 「じゃあさぁ、借りるっていうのはどう? 私の知り合いに犬のブリーダーをしてる人がいて、トライアルしてるんだよね。ほら、犬も人との相性っていうのがあるじゃん」 「でもそれって、犬を本当に飼いたい人がすることでしょ? 私の場合は、まるで犬を利用するみたいじゃん」  いくら嫌いと言っても、生き物相手であることは分かっている。感情だってあるだろうし、そんな人間都合過ぎることに利用するのはさすがに良心が痛む。  それなのに美希は、あはははと声を上げた。
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