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第二十六話 鬼族の末路
俺は釈放された。
保釈金を支払った人がいたそうだ。
恐らく親父の力だと思う。まりもの事は聞いていない。
釈放された俺は駐屯基地の前に座っている。
まりも…
俺はまりもが出てくるまでここで待っている。みちさんが俺を連れに何度か来たが断った。
『俺が釈放されたんだ。まりもを釈放すくことも可能だろう』
みちさんに「まりもを釈放したら帰る」と伝えている。
親父は痺れを切らしたのか数日でまりもは釈放された。
「まりも」
「かいと君」
うえ〜ん。
俺とまりもは抱き合い泣きあった。
※
今は自宅にいる。
食卓を挟んでみちさんとりながいて、俺の隣にはまりもがいる。
「俺達は旅に出る」
「それだけ?」
みちさんは俺とまりもを睨みつけている。りなは無表情に近い。まりもは俯いている。
「まりも、ダメだって言ったよね?どうして変身したの?」
「りな、もう良いだろ。終わった事だし」
「終わってない!」
はぁ。どうしてこんなに頑固なんだ。
俺は「気をつけてね」と涙ぐみながら送り出してくれる事を期待していた。
それがなんだ。一方的に怒られている。
「まりも、もう行こう。みちさんもりなも俺達には協力してくれなさそうだ」
「う、ん」
まりもは真正面は見れないのだろう。俯きながら首を動かして俺を見て頷く。
二人とも席を立ち俺の部屋へ入った。
「着替えとスマホ、それと…」
「かいと君、それ必要?それと、やはりみちさんとりなちゃんに謝った方がいいと思う」
「堅物に言ってもしょうがない」
貴重品だけにして家を出た。
「とりあえず駅に行こう」
「うん」
ブーン
ブーン
「なあ、さっきからバスが一台も止まらない」
俺は周りを見た。
「乗客が一人もいない。変じゃね」
「うん」
まりもも周りを見て頷く。
「タクシーにしよう」
「お金は大切にしないと後で苦しくなるよ」
俺は手を上げて乗車の意思表示をする。
しかし…
一台も止まらず通り過ぎていく。
「戻ろう」
「うん。それが良いよ」
俺とまりもは家に戻り、玄関前で耳をそばだてる。
『はい。高校生の男女二人を見かけたら、絶対に止まらないで下さい。凶悪犯ですから』
ガチャ
俺は玄関ドアを開けると静かになった。
やはり、りなの仕業か。
俺はまりもの手を引きリビングに入った。
「りな、お前の仕業か。どこにも行けないじゃないか」
「歩いていけば良いじゃない」
「あ〜わかった。歩いていくよ」
俺はまりもの手を引きリビングを出ようとすると、まりもは手を離し土下座をした。
「ごめんなさい。かいと君を止めたかった。殺人犯にしたくなかったんです」
「まりも…」
みちさんとりなは、まりもの思わぬ行動に呆気に取られていた。
「うんわかった。許してあげる」
「りな!」
「何よ!」
今度はみちさんとまりもが俺達の喧嘩を止めに入った。
俺もりなもそっぽを向いて一言も話さない。
みちさんは疲れた様で、ご飯を作りにキッチンへ行った。まりもも後をついて行く。
みちさんとまりもが作ってくれたご飯を俺もりなもそっぽを向いて食べている。
クスッ クスッ。
「何がおかしいんですか?」
「貴方達はお父さんとお母さんによく似ているわ」
まりももつられて笑っている。
なんだかわからないが、いつもの兄いもうとの喧嘩が終わり、自然と各部屋に行き眠りについた。
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