偽証討論

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その首には縄が掛けられており、その縄は天井に伸びている。 地面に足はついているものの首はその体重を支え切れずに伸びている。 一言で言えば、男が首を吊って死んでいた。 とっさに周囲を見回す。 僕のすぐ側には悲鳴を上げた女の子がいて その向こうには奇抜な格好をした女性が慌てたように周囲をキョロキョロと見回している。  他には小学生高学年ぐらいの女の子に。30歳前後に見える女性。30代半ばに見える男性。 これがこの部屋にいる全員のようだった。 そして、全員が部屋の中央にある死体に目が釘付けになっている。 「はいはーい! 注目してくださーい!」 突然、部屋の中に能天気な声が響き渡る。奥の壁に映像が映し出されているのが見える。どうやら、あそこから声が聞こえているらしい。 僕はモニターに視線を送る。他の人達もつられるようにモニターに注目する。 そこには、派手な女性が映っていた。 f43b7cd7-4765-4ce2-a83b-f70de9d66d6e 「はい。注目。あなた達元気かしら。今自分が置かれている状況が分からなくて戸惑っているだろうけど、黙って聞いて」 「あなた達は自由解放党に拉致されてここに連れてこられたの」 「どうして拉致されたのかとか無駄な質問はしないでね。自分の胸に聞いたら分かるはずだから」 「それよりも重要なことは、今の状況を知ることよね?」 「だから、私が説明してあげるわ。この施設は自由解放党の施設の一つなの。この建物の扉はすべて電子制御されているわ」 「あなた達が最初に目覚めた部屋から出た部屋の扉は鍵をかけさせてもらったわ。この大広間から出るには観音開きの扉から出るしかない。でも、もちろんそこも鍵を掛けた」 「つまり、あなた達はこの建物に監禁されたというわけ。自分の置かれた立場は理解したかしら」 「ここから出たかったら問題を一つ解いてもらうわ」 「部屋の中央に男が死んでいるでしょう?」 「その男を殺した犯人を見つけなさい」 「犯人はこの大広間の中にいる」 「もちろん、当てずっぽうで言っても不正解にするわ」 「犯人とその殺害方法。その両方を正解すれば観音開きの扉を開けてあげる」 「回答は一回のみ。このモニターの横にある端末から犯人と思われる人間を選びなさい。一度しか押せない仕様だから、全員でしっかりと話し合って全員の総意で押すことをお勧めするわ」 「間違えればその大広間に毒ガスが噴出されて、あなた達は死ぬ。ただし、犯人だけは最初に目が覚めた白い部屋に入れるように鍵を開けてあげる。つまり、回答を間違えれば犯人が生き残って、他の全員が死ぬ」 「正解すれば、観音扉の鍵を開けてここから脱出できるわ。ただし犯人には死んでもらいます」 「正解すれば犯人以外が生き残り、不正解なら犯人が残る。シンプルなルールでしょ」 「ああ。一応言っておくけれど、不正解になった後に犯人以外の人が白い部屋に入ろうとすると足についているアンクルが爆発するので注意しなさい」 「サイズが小さいから爆発で死ぬことはないだろうけど、足首ぐらいなら吹き飛ばす威力はあるわ。そうなったらどうせ死ぬから気をつけたほうがいいわよ」 「ルールは以上よ。質問は随時受け付けるわ。何かあればこのモニターに触れれば私と通信ができるから、質問があればモニターで聞きなさい。以上。検討を祈るわ」
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