14人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
偽証討論
――ガチャリ。と金属音がなる。
目を覚ますと、そこは白い部屋だった。六畳程度の広さだろうか。周囲を見回してみる。白い壁、白い天井。どこを見ても真っ白な部屋だった。正面の壁に一つだけ扉が見える。
僕は何をしていたんだっけ? ぼんやりとしていた記憶が徐々に戻ってくる。ああ。そうだ。自由解放党の事務所に僕は向かっている途中でいきなり後ろから羽交い絞めにされたんだ。数人の男にワンボックスカーに押し込まれて妙な薬を嗅がされて意識が遠くなったのを思い出した。
……背筋がゾッとした。僕は拉致されたのか。そして、ここに連れてこられた……? 一体何の為に?
頭に浮かんだ嫌な想像を振り払って立ち上がる。幸い拘束はされていないみたいだ。一通り部屋の中を見て回ったが扉以外は本当にただの白い壁と床だった。何もないどころか埃一つ落ちていない。
「この扉から出るしかないってことだね……」
僕は扉に近づく。白い以外は何の変哲もない扉だ。ドアノブは下に押し下げるタイプのようだった。
最初のコメントを投稿しよう!