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『喫茶ヨウコ』
立派な御屋敷にありそうな重厚な門柱に木製の看板が立て掛けてある。
古風な喫茶店を前に増子早苗は立ち止まった。歴史を感じる深い色味の木材に古めかしい字面で書かれた店名。メニューボードなどは見当たらない。
随分古そうな……こんなお店、今まであったかな……
門の中を首を傾け、覗き込む。
泣きすぎて頭が重い…………
重力に逆らう気力もなく、そのまま地面に落ちそうな頭の重さに溜息をついた。生い茂った竹林が見え、石畳が純和風な木造家屋へと導いている。風情があると言えば聞こえはいいが、鬱蒼としていて気味悪さも感じてしまう。
1人になりたくない……
寂しさと悲しみで満ちてしまった心を紛らわしたい一心で、早苗の足は竹が織りなすトンネルにふらりと吸い込まれていった。
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