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おじいさんはそれから時々、竜を抱きしめるようになった。
竜がご飯を食べ終わったときや、眠る前や、特に何もないときに、そっと腕を伸ばして、優しく竜を抱き寄せる。
竜も前足をおじいさんの背中に回して、抱き着く。
そうすると体も心もぽかぽかと芯からあたたかくなって、どうしようもなく幸せになった。
竜はおじいさんが大好きだった。
そのことに気づいた日は、ぶわっとお花が全身から咲いたような気持ちになった。
人を好きになったことがなかった。
でも、好きになったことがなくたって、好きになったら「これが『好き』なんだ」とちゃんとわかった。
竜はおじいさんが大好きで大好きでたまらなかった。
おじいさんと過ごす時間がどうしようもなく好きで、おじいさんの優しい声がゆっくりと何かを話すのを聞くのも、何も言わずにただ傍に寄り添って過ごすのも、おじいさんと同じベッドにもぐりこんで二人で眠るのも、何をするのも好きだった。
ただおじいさんと一緒にいられるだけで、胸がぽかぽかする。
大好きだよって伝えたいと、あるとき竜は思った。
恩返しもしたかった。
だからおじいさんがいつものように竜のそばにやってきたとき、ふわっと頭をおじいさんの胸にすり寄せた。
おじいさんは大喜びで、わしゃわしゃと竜の頭を撫でまわし、それからいつものようにぎゅうっと抱きしめてくれた。
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