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竜が初めて泣いた日も、初めておじいさんとハグした日も、初めて一緒に眠った日も覚えているのに、初めて笑ったときだけは思い出せなかった。
それはおじいさんも同じで、一番最初に竜が笑ったのがいつか、よく覚えていない。
ただ、当たり前の何気ない毎日を過ごしていくうちに、いつの間にか竜が楽しそうな笑顔を見せるのも、同じくらい当たり前になっていた。
竜は好物をもらうたびに笑い、朝起きておじいさんから頭を撫でてもらうと笑い、おじいさんの声を聞くたびに笑い、お風呂に入れてもらうときでもくすぐったそうに笑い、とにかく一日中楽しそうに嬉しそうに過ごした。
じっさい、竜は一日中楽しかったし嬉しかった。
竜はもう、自分が竜になる前のことなんてほとんど覚えていなかった。
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