2人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
ザザ、とノイズが走るように、かすかに記憶がよみがえった。
____あなたなんかいらないのよ!
____役立たず
____本気でやってるの?
____あははははっ、うそ、マジで信じたの!? ウケる~!
____気持ち悪い!
____早く出てって!
「……」
ざあざあと、冷たい雨が降っていた。
土砂降りというほどでもなく、けれど決して小雨ではない雨が、次々と竜の体を滑り落ちる。
竜の腕は震えて動かず、足は力が抜けて立ち上がれず、長時間冷え切った雨にさらされた体からは皮膚感覚が消えて、視界はかすんでいた。
竜はゆっくりとまぶたを閉じた。
目の前が真っ暗になる。
雨の匂いと、土の匂いと、草の匂いが、かすかにした。
遠くで、やまない雨が降り続く音がぼんやりと聞こえた。
だんだん意識が遠のいていく。
竜はひとりぼっちだった。
最初のコメントを投稿しよう!