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「でも俺、ひかりのこと気に入ったんだよね。可愛いし、今殺しちゃうのもったいないなあ」  昼と夜が混じり合う刹那。目が痛くなるほどのオレンジが、黒須君を黒い輪郭だけにしていく。  頭が割れそうに痛い。  出会ったらわかる、悪魔の気配。身体はずっとサインを出していた。きっと天候もだ。真実は常にそこにあった。私が見ようとしなかっただけで。  こんなはずじゃなかった、はただの言い訳。私は悪魔にまんまと騙された、それだけだ。 「どっちがいいか選びなよ」  ぎゅっと握りしめた掌に聖なる力は宿ってくれない。じわりと汗が滲むだけ。肩甲骨の辺りがぴくぴくと疼いたけれど、羽も出てきてくれない。私はそこから微動だにできないまま。 「簡単な選択だよね?」  甘やかにゆるやかに囁きながら、深い闇は迫る。突風に煽られて、エクリュベージュのカーテンが暴れ狂う。 「俺のモノになるか。それとも──」  何と答えたかは覚えてない。気づけば唇が、黒に溶けていた。 ~完~
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