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4
もちろん何ひとつ解決しないまま、放課後──。
たっぷり居眠りしたくせに、まだ頭痛が消えてくれない。今日は部活もないから真っ直ぐ帰宅しよう、と帰り支度をしていたら、隣から綺麗な手がすっと私の机に伸びてきた。
黒須君の手はすぐに引っ込められ、その代わりにノートの切れ端のような小さな紙が机の上に置かれていた。すぐに手に取って中身を確認する。
『このあと、朝の話の続きできる?』
断る理由なんてない。正体がバレているなら尚更だ。バレた理由を知りたいし、天使のしっぽが何のことかも。何も知らないままじゃ対処のしようがない。
黒須君の視線をちゃんと感じていたから、返事を書く代わりにコクリと頷いた。
とりあえず、教室から人がいなくなるのを待つ。私はなんだか落ち着かなくて、何度もトイレに行ったり、無駄に廊下を三往復したりした。
ようやく二人きりになれたのは、教室がオレンジ色に染まった頃。
「ごめんね、残らせちゃって。どうしても話したかったから」
黒須君は眉を下げ、すまなそうな笑顔を向けた。
「ううん、大丈夫。……ねえ、単刀直入に聞いていいかな?」
黒須君は「どうぞ」と微笑んだ。
「黒須君が探してる、天使のしっぽって何?」
「ああ、それはね。証拠とか確証って意味で使ったんだよ。ほら日本語でよく、しっぽを出すとか言うでしょ」
「……なるほど」
と言ったものの、違和感しかない。だって「しっぽを出す」は、ボロを出すとか化けの皮が剥がれるとか、あまりいい意味で使わない言葉だ。
でも、黒須君は海外育ちらしいから、細かいニュアンスの違いまではわからないのかもしれない。
「それってつまり、天使を探してる、ってこと?」
「そうだね。目星はとっくについてるんだけど、どうしても確証がなくて」
「黒須君が目星をつけたのは、私?」
思い切って聞いてみた。確証も見せてないのに目星をつけられた理由も気になるけれど、それは後回しだ。
「そうだよ。今度は俺が聞く番。ひかり、天使なの?」
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