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 そんなことをぼんやり考えたりそれどころじゃなくなったりしながら三十分ほどすし詰めに耐えれば、ようやく到着。  電車を降りても空は暗いままで、つい足取りも重くなる。先週までは見事な秋晴れで、今にも宙に浮いてしまいそうなほど身体が軽かったのに。  でも、本当に天気のせいだろうか。学校に近づくにつれ、身体のだるさがどんどん増していくのだ。かといって、具合が悪いのともなんだか違う。  昇降口で下駄箱から上履きを取り出す頃には、うっすらと寒気まで感じ始めた。曇りとはいえ気温はさほど低くないのに一体なんだろう。風邪の引き始めだろうか。  ──不吉の前触れ。  不意に、頭の中で祖母の嗄れた声が響いた。  いやいや、そんなわけがない。私にそんなかっこいい予知能力は備わっていないはず。  教室に入ると、なんだかいつもよりざわざしていた。教室の真ん中にできた女子の輪の中にいちばん仲良しのすーちゃんを見つけ、早速声をかける。 「すーちゃんおはよう。なんかあったの?」 「あっ、ひかり。おはよ、あのね、今日うちのクラスに転校生が来るらしくて」 「へえ、そうなんだ」  なるほど、それでこの騒ぎかと納得した。中高一貫だからなのか、この学園から転校する生徒はいても、外部から転入して来ることはほとんどないのだ。 「ひかりの隣だよ、多分」  窓際から二番目の列の最後尾、自分の席を振り返った。そういえば、昨日まではなかった私の隣に机がある。 「ほんとだ。どんな子なんだろ……」  まだ見ぬ転校生に少し緊張していたら、やがてチャイムが鳴り響き、慌てて席に着いた。
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