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 相変わらず毎日曇天続き。身体の調子もずっと変なままだ。家にいれば大丈夫なのに、学校に向かうとなんとなく調子が悪くなる。  特におかしいのは授業中で、妙な寒気がしたり耳鳴りがしたり、頭が痛くなったりする。  無自覚だけれど、もしかして実は私、学校に行くのが嫌なんだろうか。  いや、せっかく隣にスーパーイケメンがいるのに、嫌なわけがない。多分やっぱり天気のせいだ。  そのイケメン君は、転校してきて一ヶ月もしないうちにクラスの中心になった。それどころか、他クラスや二、三年生の間でもすっかり有名人らしい。  そりゃそうだ。容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能。この間の中間テストでは全教科満点だったそう。 「黒須君は本当に一生懸命授業を聞いてくれているのね。先生感激だわ」  鬼ババの異名を持つ、数学の毒島(ぶすじま)先生でさえ、黒須君には猫なで声を出すほどだ。 「先生の教え方がとても上手だから、つい熱心に聞いてしまうんですよ」  黒須君は誰にでも分け隔てなく、たとえ相手が毒島先生だろうと優しく接する。昨日は日直だったすーちゃんが職員室に持っていくはずのノートの山を、「手伝うよ」と言ってそのほとんどを運んでいた。  いつでも明るい笑顔を絶やさない。怒るどころか、ほんの少しの不機嫌な表情すらも見たことがない。性格までとびきりいいなんて、一体どんな育ち方をしたんだろう。  そんな非の打ち所のない彼についたあだ名は『天使』君。  みんなが抱く天使のイメージは随分と完璧だなあと思う。ここまで求められたら天使も大変──。 「……の……天野(あまの)、こら、天野ひかり!」 「はいいっ!」  しまった、毒島先生の授業中なのにぼんやりしてしまった。 「早く前に出て例題を解きなさい」  何ページの例題だろう。私は授業を聞くどころか、教科書すら開いていなかったのだ。
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