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保健の先生には生理痛だと偽って、少し休ませてもらうことにした。
先に教室へ戻る黒須君にもう一度お礼を言って、ベッドに横になった。掛け布団は恐ろしいほど重いし、敷布団はペラペラ。枕も低くて固くて、ここに寝ていたら本当に具合が悪くなれそう。
それにしても、暇。授業が終わるまであと何十分くらいあるんだろう。スマホは教室のカバンの中だし、四方をカーテンに囲まれて、天井眺めるくらいしかやることがない。
一人きりの空間は得意じゃない。いろいろ考え事をしてしまうから。自分が今どうしてここにいるのかとか、本当にここにいていいんだろうかとか、普段は忘れているそんなことばかりだ。精神衛生上よろしくない。
やることがない時はいっそ寝てしまおう、と仕方なく目を閉じる。残念ながら全然眠くない。動物の数でも数えれば眠れるかしら、とぼんやり考えていたら。
「しっぽ」
なぜか不意に、さっき黒須君が放った単語が頭に浮かんだ。
しっぽをずっと探しているけれど見つからない。黒須君はそう言っていた。
何のしっぽだろう。それに、しっぽなら何にせよ胴体にくっついているものだと思う。しっぽだけ探すのは変だ。
もしかしたら、しっぽのアクセサリーでも失くしてしまったのかもしれない。そんな可愛いものを身につけるイメージじゃないけれど、誰かにもらったすごく大切なものの可能性もある。
一緒に探してあげようか。
ふとそう思いついた。ちょうどいい、今日助けてくれたお礼にもなる。もちろん、黒須君がしっぽの詳細を教えてくれたら、だけれど。
いや別に、これを機に特別親しくなろうとかそんなんじゃない。クラスメイトが困っていたら助ける。私だってたまには天使っぽいこともするのだ。
黒須君がスーパーイケメンだからじゃない、断じて。
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