別れと出会い

1/2

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ

別れと出会い

 父に腕を引かれて走ると、歩幅の違いに足がもつれる。 「お父さんどうしたの」 問いかけても父は荒い息で前進する。そして、ドラム式洗濯機の様な装置のある部屋に辿り着いた。 「アオイ、決してここを出てはいけないよ」 その中に押し込められ、アオイと呼ばれた少年は狼狽した。 「お父さん、なに、なにがあったの。怖いよ」 脅える息子の肩を父はしっかり抱きしめる。 「安心しなさい。お前だけは危険な目に合わせたりしない」 父は何を言っているのだろう。全てが理解不能だった。父の目だけが、不安の中で気丈にアオイを見つめている。 「お父さんはどうするの」 アオイは装置の中で懸命にスペースを空けるが、アオイの小さな体ですら目一杯の空間だ。 「父さんは、すぐいく」 父は装置の蓋を名残惜しそうに閉めた。しばらくガラス越しに見つめ合い、そして暗い部屋にアオイ一人になる。 「怖いよ」 心細さで胸が潰れそうになった時、装置の中に白い煙が噴射された。 驚いたのも束の間、アオイは気を失い視界が暗くなった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加