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別れと出会い
父に腕を引かれて走ると、歩幅の違いに足がもつれる。
「お父さんどうしたの」
問いかけても父は荒い息で前進する。そして、ドラム式洗濯機の様な装置のある部屋に辿り着いた。
「アオイ、決してここを出てはいけないよ」
その中に押し込められ、アオイと呼ばれた少年は狼狽した。
「お父さん、なに、なにがあったの。怖いよ」
脅える息子の肩を父はしっかり抱きしめる。
「安心しなさい。お前だけは危険な目に合わせたりしない」
父は何を言っているのだろう。全てが理解不能だった。父の目だけが、不安の中で気丈にアオイを見つめている。
「お父さんはどうするの」
アオイは装置の中で懸命にスペースを空けるが、アオイの小さな体ですら目一杯の空間だ。
「父さんは、すぐいく」
父は装置の蓋を名残惜しそうに閉めた。しばらくガラス越しに見つめ合い、そして暗い部屋にアオイ一人になる。
「怖いよ」
心細さで胸が潰れそうになった時、装置の中に白い煙が噴射された。
驚いたのも束の間、アオイは気を失い視界が暗くなった。
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