<25・トリヒキヲモチカケル。>

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<25・トリヒキヲモチカケル。>

 説明不足だろこいつら。  アンリはストレートにそう思った。というのも、アンリが皆と相談して質問した中には、ゲームの根幹を揺るがしかねないものがいくつもあったからだ。例えば。 「コントローラーは外に持ち出せるし、怪物の現在位置は逐一アナウンスで報告される、そうッスね?」 『はい、その認識であってます』 「でもって、どの指揮官……というか、三階、四階、五階のどのコントローラーがボタンを押したかもアナウンスされるからわかる、と。でもってコントローラーを操作するのは指揮官でなくてもいいし、部屋の外でやってもいいと」 『その通りでーす!よく気づきましたねえ』  馬鹿にしてんのかこいつ。テレビ画面に登場した女の子のキャラクターに、思わずそう怒鳴ってしまいそうになる。無論、AIの音声に、運営が打ち込んだ言葉を喋らせているだけだというのはわかっているが。いちいちこう、言い方が癪に障るのだ。無駄にボイスロイドの出来がよくて、人間が喋っている声とさほど変わらないから余計に。  せめてもう少し丁寧に、親切に、事務的に話す受付のお姉さんくらいにしておいてほしかった。ああ、可愛い女の子のアニメキャラを本気で殴りたいと思ってしまう日が来るだなんて!知りたくもなかったとも!! 『えーっと、いっぱい質問しましたけどお、もういいですか?私も暇じゃないんですよう』  仕舞いには、髪の毛をくるくると指で巻きながら、つまんなそうに言ってくる始末である。マジでしばいたろか、とこめかみに青筋を立てるアンリ。  自分は結構気長な方だと思っていたが、流石にこう、人の心がわからなすぎる相手と会話するのは苦痛というものである。楓相手に話すのも疲れはするが、これはまた別のムカつきっぷりだ。 ――質問は……尋ねなければいけないことは、ひとしきり話したか。  テレビ横にはメモ帳とペンが置かれていたので、みんなの意見はそこにまとめてあった。メモに視線を落としながら確認するアンリ。  尋ねなければいけないことは、一通り尋ねたはず。この“運営に質問できるボタン”に気付かなかったらとんでもないことになっていただろう。我ながらファインプレーである。  いかんせん、ボタンの色が灰色で、文字も小さいので非常に見にくいのだ。アンリが老眼だったら見つけられなかったかもしれない。 ――収穫は、あった。三階、四階、五階のフロアが空になった時、どうなるのかってことについても。  AIは答えた。  鍵を五つ全て見つけて、501A――つまりアンリが今いる部屋の金庫を見つければ、アンリ達はクリアということでこのゲームを抜けられる。そうなった時は、金庫を開けた時点で、501Aから505Aの部屋に設置された隠し通路が開かれるので、そこからこのホテルを脱出することができるという。  つまり、三階にしろ四階にしろ五階にしろ。クリアが出れば、そのフロアのチームは全員脱出して空になるのだ。
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