落ちこぼれ君と最弱君

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アーヴィスは小さな革張りの丸椅子を引き寄せそこに座って、ギルが食事をするのを眺めていた。 「ギル、よく聞くんだ。もし、ブラハードに決まったら、地の時代が訪れることになる。地の恵みで穀物は良く実り食料状況は良くなるだろう。先代の王はフムス家だったから、今ある流通を利用すれば国はさらに栄えることができるはずだ。ギルとも相性はそれほど悪くはないだろう。うまくやるんだ」 アーヴィスの予想外に真剣な眼差しに胸騒ぎを覚える。 「急になんだよ…お前、変だぞ?」 ギルの言葉には答えず、アーヴィスは尋ねた。 「で、これから、どうするつもりかな」 「親父は暫く俺の顔も見たくないだろう。どっか別宅でも行くか、もしくはいっそ旅に出ちまうのもいいかもな。どうせ俺は用済みだ」 「だったら、暫くここに逗留するのはどうだい?」 「いいのか?」 「別に構わないよ。部屋は腐るほどある。だた、人手は足りないから、ミレーヌ達をちょっと手伝ってもらえばいいさ」 「助かる」 「きっとそのうち、答えが出る」 再び書物に戻ったアーヴィスの言葉の意図を読み取れないまま、ギルは最後のパンを飲み込んだ。
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