落ちこぼれ君と最弱君

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それから数日間ギルは、アーヴィスの館で過ごした。 来た時のように、竈に火をこめたり、庭木の手入れや、高い場所のすす払いまでやらされることになった。 食事はほとんどアーヴィスととり、たわいもない話をして、夜がくれば部屋に戻って休んだ。 頼まれごとに不服は言っていたが、本当はとても満たされていた。 屋敷にいれば、能力は低いのに長男だからというだけで優遇されていと陰で囁かれ、親族や臣下たちの不満や侮蔑にまみれた眼差しに囲まれるしかない。 しかも、いかに自分が周囲が思うように落ちこぼれであるかは、よく知っていた。 どうして、皆とおなじように上手くできないのか。 何かするたびに、がっかりした落胆の眼差しで見られるのは限界だった。 だから、今回の選考会で失格になったことで、実はせいせいしてもいた。 別に王様になりたい気持ちもなかった。 誰からも期待をかけられなければ、期待を裏切ることもない。 とても身軽だった。 しかも、ここではちょっとした魔法でも喜んでくれる友人がいる。 彼の役に立っている。 それだけで、十分だった。 ここに居ていいと思える。 周囲を見回せば、この館で働いている者は多かれ少なかれ、同じように感じている者たちばかりだった。 そんな、平穏な日々が破られたのは館に来て2週間も経った頃だった。
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