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夜も深まった頃だった。
激しく玄関のドアが鳴らされ、開ければ王城直属の衛兵が数人立っていた。
どれも鎧をまとった屈強な男たちだ。
「何用です。アーヴィス様はお休み中です」
ミレーヌが言えば、衛兵は蝋で封された手紙を掲げた。
「直令だ。アーヴィス様をゼロ地点へお連れする」
「何言ってるんだ?!」
騒ぎを聞きつけたギルが階段をかけ下りてくる。
ゼロ地点とは、王城が浮かぶ真下にある、古代の神殿の遺跡がある場所だった。
立ち入りは厳しく禁じられていて、今は誰も近寄りもしない、そんな場所だ。
衛兵はジロリとギルを見て「落ちこぼれは黙ってろ」と吐き捨てた。
激高し、術を唱えようとしたところで、後ろから肩を叩かれた。
「アーヴィス?」
「私に勅令ということは、王が決まったってことか」
「その通りです」
「いつ?」
「本日の選考会でだ。…お前の失態で時間がかかったからな」
「なんだと…!」
「それで、新王は誰になった?」
「フムス家のブラハード様だ」
「なるほど…。手を打つのが早いわけだ。わかった。行こうか」
アーヴィスはそう言うと、ミレーヌに外套を持ってくるように言いつけた。
少し戸惑った表情を浮かべ、ミレーヌは頷き奥の間に消えた。
「アーヴィス、行く必要なんかない。ブラハードは悪い奴じゃないが何を企んでるかわかったもんじゃないぞ?」
ギルがアーヴィスに詰め寄る。
ぱたぱたと軽い足音を響かせミレーヌが外套を抱えて戻ってきた。
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