落ちこぼれ君と最弱君

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「…熱っ!!なんだ?!」 ギルを押さえつけていた衛兵が叫んで手を緩めた。 手袋がまるで、熱した鉄を触ったかのように焦げて煙を上げていた。 拘束が緩んだ隙を逃さず、ギルは腕を振りほどいて走り出した。 走りながらどんどん体が熱くなっていくのを感じていたが、そんなことに構っている余裕はなかった。 武人が、刀を振り上げる。 アーヴィスの瞼があきらめたように閉じる様がくっきりと見えた。 翼が欲しいと強く思った。今すぐに友のもとに飛んでいくことができる力が。 「アーヴィス!」 背中に焼けるような熱さを感じた。 振り下ろされた刀が、容赦なく縄を断ち切る。 アーヴィスが、奈落の底に落ちていく。 ギルは崖のふちを蹴って跳んだ。次の瞬間、ギルは真赤な燃え盛る炎の鳥の姿となり、奈落の底に向かって急降下した。 * アーヴィスの体は深く地の底に落ちていくところだった。 最後に見た、友の目に映った絶望の色を悲しく思い出し胸が傷んだ。 容赦なく地上の光がぐんぐんと遠くなっていく。 一方で、これで良かったのかもしれないという思いもよぎった。 大切な友人を友人のままにできたのだから。 ふとその丸い光の中に、点が現れた。 その点がぐんぐんと大きくなり、鳥の形になった時、アーヴィスは目を見張った。 「これで良かった」と思っていたはずなのに、心が喜びに溢れるのを止められなかった。 「ギル!」 名前を呼ぶと応えるように、高い鳴き声を響かせた。 真っ赤に燃え盛る炎の鳥が、アーヴィスを嘴で掬い上げ、背に乗せる。 炎の中にいるのに、熱くはなく、体温のようなあたたかさを感じるのは不思議な体験だった。 そのぬくもりに包まれたまま、鳥は地上に向かって急上昇する。振り落とされないように強くしがみつく。
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