落ちこぼれ君と最弱君

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風圧から解放され、地上に戻ったことを知る。 太陽がまぶしくアーヴィスの目を焼いた。 炎の鳥と生贄になったはずのアーヴィスが舞い戻ったことで、地上は混乱を極めた。 衛兵たちが、未知の物への恐怖から、一斉に矢を仕掛ける。 炎の鳥が怒りの声を上げて、翼を大きくはためかせた。火の雨が地上を襲う。 「待って、ギル!!」 アーヴィスはギルの首を抱きしめた。 地上に目を移せば、四家の長達がこちらに標準を合わせている。 アーヴィスは覚悟を決める。 「ギル、ごめんね」 そう呟くと、右腕の腕輪を外して掲げ、呪文を唱える。 魔力がない自分にたった一つ、伝えられた言葉だった。 次の瞬間、腕輪は大きくなり、炎の鳥の首にカチリと嵌った。 断末魔のような声を上げて、炎の鳥が苦し気に悶える。アーヴィスは地上に振り落とされる。 立ち上がろうとしたところに、槍を構えた衛兵達がアーヴィスを取り囲んだ。 「引け」 低い声が響き、新王のブラハードが衛兵たちの間を割って、歩いてくる。 そして、跪き自分の頭上から王冠を取り、アーヴィスに授けた。 ブラハードに続き、ほかの四家の王族たちも、同様にアーヴィスに向かって跪いた。 静かに、アーヴィスは立ち上がる。 「ゼロの王、アーヴィス。騎士の発現にて、今ここに即位の儀とする」 ブラハードがよくとおる声で、宣言した。 アーヴィスが後ろを振り返ると人型に戻ったギルが、唖然とした顔で自分を見ていることに気づき、笑った。 その首には、先ほどの銀の腕輪が光っていた。
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