落ちこぼれ君と最弱君

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数刻前、この王城の中央広場では、四つの王族が集い、魔術による戦いが繰り広げられていた。 この国では、魔術を使う王族が国を治めている。 半月前、50年統治をしていた王が崩御した。新しい国王を急ぎ選ばなければならない。 王になる器に求められているのは、魔力と人格。 後継者候補は、王族の中でも四家出身の者に限られていた。 東のヒュドール家、北のフムス家、西のホレス家、そして南のイグニス家である。 個々人によって、得意魔法はあるものの、どれも満遍なくバランスよく使えるものが優れた魔術師であると評価される。 東西南北の王家出身の、男女四人。手にはそれぞれの魔法の杖を携え、向かい合う。 空色の長い髪の女は、ヒュードル家のロゼ。水魔法を得意とする。 眼鏡をかけた長身の男はフムス家のブラハード。土魔法専門だ。 女性達の歓声に応え忙しく手を振る男はホレス家のアエラスで、風魔法を使いこなす。 そして、赤髪に頬に大きな傷が目立つ、不機嫌そうな青年がイグニス家のギルだった。 四人は子どもの頃からの幼馴染でもあった。 互いに性格や気質は知り尽くした中での戦いだ。 中央広場の四隅には四家の家紋が書かれた旗がそれぞれ立ち、陣が敷かれている。 簡易とはいえ、座り心地のよさそうな椅子には四家の長と妻が座り、周りを一族が固める。 それぞれの臣下の者たちが声援を送り合い、場はとても賑やかだ。 王城の外の街では祭も行われているという。 王族にとっては運命の時だが、庶民にとっては数十年に一度の一大イベントだった。 取り仕切る元国王の臣下である長老たちの「始め」という合図で、観衆は息を詰めて静まり、四人の間には緊張が走った。
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