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Ⅵ 俺の進む道
「──ドン・ジョゼ・デ・ガルシア、貴殿を特別潜入捜査官に任ずる。祖国エルドラニアとカルロマグノ国王陛下の御ため、以後、ますます以て任務に励むように」
「ハッ! 謹んでお受けいたします!」
あれから一月ほど後、俺は団長の執務室でそんな辞令交付を受けていた……。
本当なら要塞の大広間か大聖堂かどっか広い場所で、純白に正装した羊角騎士が一堂に会する中、荘厳かつド派手にやってもらいたいところではあるのだが、隠密を旨とする任務の役目柄、まあ、贅沢は言えないだろう。
敵を騙すにはまず味方からというやつで、俺のこの役職は限られた者にしか知らされていないのだ。
というわけで、残念ながら場所は狭い執務室だし、いるのはハーソン団長と、あとはアウグスト副団長にメデイア魔術担当官といういつもの三人組である。
「これまでは下っ端の海賊やゴロツキなんかに金を掴ませてやっていたが、正規の団員にも一人くらい、そうした隠密の者がいて悪くはないからの」
今回、新たに作られたこの役職に、アウグスト副団長も目から鱗といった様子でそう呟いている。
「これをあなたに差し上げましょう。魔導書『ソロモン王の鍵』により造り出した〝太陽第6のペンタクル〟です。これを持っていれば透明になれる…というか気配がなくなり、その存在が限りなく見えにくくなります。きっとあなたの任務に役立つでしょう」
また、魔術担当官らしくメデイアさんは、そう言って拳ほどの金属円盤を俺に手渡してくれる。
あの後、トリニティーガー島よりサント・ミゲルへ戻った俺は、自分の得意とすること、自分にしかできないことというのをあれこれ考えてみた……その結果、今回の一件で思いがけずも知り得た、意外と自分が情報収集に長けていること、また、身分を偽って相手方に潜り込むのが得意であることを活かそうと思ったのである。
そこで、今までの経緯と思いついたこのアイディアを、俺は包み隠さず団長と副団長に打ち明けてみた。
まあ、あれこれ規律違反や問題行動を起こしていたりするので、最悪、処罰覚悟の告白ではあったのだが、そこはさすがハーソン団長、違反の数々は不問に処すと、俺のこの提案を快く採用してくれた。
やはり慣習や形式よりも実をとる、現実主義者のハーソン団長だけのことはある……ま、頭の硬いアウグスト副団長の方は少々渋い顔をしていたが……。
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