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「──なんだい? マルク・デ・スファラニアについて何か聞きたいんだって?」
その情報を得て最初に話を聞きに行ったのは、〝白シュミーズ〟の異名を持つ大海賊の一人、ジョナタン・キャラコムである。
仇名どおり、白いシュミーズ(※シャツ)に白いオー・ド・ショース(※膨らんだ半ズボン)、腰帯までもが白という全身白づくめの伊達男なのだが、両脇に若くて美しい女海賊をはべらせた、いかにもなチャラ男っていう感じの人物だ。
「あ、あのう…… 魔術師船長がヘタレ…もとい、なんというか……そう! 武芸がものすごく不得意だって話は本当ですか?」
その女海賊達と小洒落た飲み屋にいるところを捕まえた俺は、相手を刺激しないよう、なるべくオブラートに包んだ言葉を選びながらそう尋ねてみる。
海賊同士は商売敵といえども、島の仲間を悪く言われて気分を害すかもしれない……相手は大海賊、怒らせでもしたら命が危ない……。
「まあ、俺が言うのもなんだけどさあ、確かに昔からヘタレだったね。ぜったい戦闘に参加しないし。ナンパなこの俺ですら、一応、カットラス持って前線に出るってのにね」
だが、ジョナタンは庇うこともなく、さらっと魔術師船長をヘタレ呼ばわりする。
このチャラ男もチャラ男であまり強そうには見えないが、そのチャラ男にも言われるということはそうとうなものなのだろう。
また、次に訪ねた白髪鬘にアングラント王国風の赤いジュストコール(※ロングジャケット)を纏った私掠船の船長、通称〝村長〟と呼ばれているヘドリー・モンマスも……。
「──ああ、いうなればヘタレだな。船長キッドマンの船にいた頃からそんな感じだ」
アングラント製の彼の海賊船の船長室で、やはりジョナタンと同じようなことを躊躇いもなく言ってのける。
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