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さらに片メガネをかけた商人風の、海賊というよりは〝詐欺師〟が本業らしいジョシュア・ホークヤードも……。
「マルク・デ・スファラニア? ああ、完全にヘタレだ。キッドマンもそのことはよく理解していて、けして戦いには使わなかった。戦闘要員としては一文の価値もない……それはそうと、働き口を捜してるんならうちの一味へ来るか? 秘鍵団なんかよりもよっぽど高待遇で給金もはずむぞ? 週休二日、残業なしのアットホームな職場だ」
商館のような建物で面会した彼は同じく魔術師船長のことをヘタレ呼ばわりし、ついでに海賊志望の渡航者設定である俺を甘い言葉で勧誘してくる。
「か、考えてみます……」
いや、〝詐欺師〟にそう言われても、ぜったいにブラックな職場である臭いしかしねえ……。
さらにさらに〝海賊剣士〟の異名を持つ海賊一の剣の遣い手、フランクル人海賊のジャン・バティスト・ドローヌも……。
「──うごっ…!」
「んがっ…!」
「なんだ貴様ら! これしきのことではエルドラニアの将兵に勝てんぞ!」
その青のジュストコールに羽根付きつば広帽を被った眼光鋭き男は、彼の道場で細身の直剣〝レイピア〟を素早く振い、稽古をつける配下の海賊達を一瞬の内に叩きのめした後。
「マルク・デ・スファラニア? ああ。剣の腕に関しては赤子の手を捻る以下のヘタレだ」
と、剣同様に一刀両断だ。
「そんなことよりも貴様。海賊になりたいのならば、まずはここで剣を学んでいけ。俺が直々に稽古をつけてやる」
「きょ、今日は忙しいので遠慮しときます……」
その上、俺にまで稽古をつけようとするジャン・バティストに、俺はここでも丁重にお断りをした。
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