Ⅴ 海賊の証言

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 加えて、銀色に輝くカラビニエール・アーマー(※キュイラッサー同様、胴部だけを覆う甲冑)をその身に纏う、オカッパ頭に髭剃り跡も青々しい、〝青髭〟ことジルドレア・サッチャーというもとフランクル王国貴族出身の船長も……。 「──マルクちゃん? 確かにマルクちゃんはヘタレかもしれないね……でも、ヘタレでもなんでも可愛ければかまわないのさ! じつは彼も、昔から僕の美少年コレクシオンに加えたいと思っていたんだよ!」  なぜか美少年の手下ばかりを周りに従え、なんだか怪しい雰囲気の海賊船に乗った彼は、同じくヘタレ呼ばわりしつつも恍惚とした表情を浮かべ、なんだかわけのわからないことを口走っている……。  その声色やギラギラとした眼の輝きもなんだか気色悪いし、この人にはあまり近づかない方がよさそうだ。  そして、最後に訪れた〝悪龍〟ことフランクリン・ドラコも……。 「──んだ、てめえ!? なに気安く頭に話かけようとしてんだコラ!」 「調子乗ってんじゃねえぞコラっ!」  その前に、このドラコと話すのには少々手間が折れた……。  船着場の倉庫裏に一味で屯していると聞き、さっそく行って声をかけてみると、血気盛んな手下連中が因縁つけてきたのである。  一味の者達全員がそうなのであるが、船長のフランクリン・ドラコからしてバリバリのツッパリ・ヤンキーだった。  黒髪をリーゼント&ポンパドールにバッチリと固め、素肌の上に黒い提督風ジュストコールをイカつく羽織ると、酒樽の上に片膝座りして肩には棘々付き鉄製メイス(※柄頭付き棍棒)を背負っている。  小っちゃな頃から悪ガキで悪の道を突っ走ると、腕っぷしだけで船長にまでのしあがった筋金入りの武闘派であり、ジュストコールの背に刺繍された赤いドラゴンが、その通り名の由来らしい……。 「舐めとんのかコラっ!」 「ヤキ入れられてえのかゴラぁっ!」 「い、いえ、俺はただ、武名の誉高きドラコ船長にちょっとお話をうかがいたく……」  腰を屈めた低姿勢からガンをつけてくるツッパリ達に四方を囲まれ、たじたじになりながらも釈明する俺だったが。
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