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「けどな、ヤツの魔術はホンモノだ。魔術に関しちゃあ、この島の海賊はおろか新天地でも…いや、世界広しといえどもヤツの右に出る者はいねえ……だからキッドマンさんもヤツを認めてた」
その答えとなるようなことを、予想外にもドラコがポツリと呟く。
「それに薬にも詳しかったから船医としても重宝してたようだしな……ま、キッドマンさんが認めたんなら仕方ねえ。一端の海賊としてだけは、俺もちったあ認めてやることにするぜ」
さらに続けてどこか気恥ずかしそうに、目線を外しながらドラコはそう付け加える。
その言葉に、それまで俺を悩まし続けていた心の中のもやもやが、さっと霧散するかの如く晴れたような気がした。
そう言われてみれば……今、思い返してみると、これまで話を聞いてきた人々もみんなそんなことを口にしていた。
例えばイサベリーナ嬢も……。
「──でも、ヘタレなくせして魔術はすごかったですわよ? わたくし、マルクが悪魔を召喚して言うこと聞かせてるのをこの目で見ましたの!」
〝白シュミーズ〟と呼ばれるジョナタンも……。
「──あ、でも、昔から魔術の腕と医術の知識だけはピカイチだったよ? 戦わない代わりにそれでキッドマンの一味でも貢献してたんだ」
〝村長〟ヘドリーも……。
「それでも当時から魔術と医術に関しては群を抜いていたの。キッドマンも頼りにしておった」
〝詐欺師〟のジョシュアも……。
「──だが、魔術の腕は確かだ。魔術師としては特別手当を付けてでも雇いたいくらいだな。頭も俺並みにキレるし、なかなかに狡賢い」
〝海賊剣士〟ことジャン・バティスト・ドローヌも……。
「──しかし、魔術の才は天下無双であるな。剣や銃を以ってしてもかなわぬ異次元の強さだ」
あ、あと、あの変態…もとい、〝青髭〟ことジルドレアも……。
「──それに、マルクちゃんはヘタレだけどそうとうに魔術が使えるからね。彼の協力があれば、悪魔の力を使って世界中の美少年・美少女を我が物とできる!」
魔術の腕を褒め讃えるとともに、邪な己の欲望をますます以って燃えあがらせていた……。
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