Ⅴ 海賊の証言

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 そうなのだ……戦いでの強さだけがすべてではない。腕っぷしが弱くとも、何か一つ他のことに長じていれば、充分、海賊としてもやっていけるのである。  騎士団だって同じだ…… よくよく考えてみればメデイアさんなんかまさに魔術師としての腕を買われているわけだし、魔術以外でもアウグスト副団長や軍医のアスキュール先生、伝令官のアイタ・イーデスのように、斬った張ったの戦闘ではなく、他の役割で活躍している者達もたくさんいる。  ま、メデイアさんは無論、アスキュール先生は死者を甦らせた超絶名医だし、イーデスも一日中走っていられるような超人なのだが……。  けど、そこまででなくとも、武芸に秀でていなくたって、自分の得意とする分野で多少なりと貢献することはできるはずである。  戦いでは役に立たなくとも、何か俺にできること……この俺にしかできないこと……ずいぶんと遠回りをしてしまったが、俺はこの海賊の島へ来て、ようやく自分の進むべき道を確かに見出した──。
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