Ⅱ 頂点の三人

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 騎士団のツートップからしてこんな感じなのだが、さらに騎士団のNo.3とも呼べる、魔術担当官のメデイアさんもまた、修道女のくせしてかなりの逸材である。  いや、魔導書による悪魔召喚魔術を使うので、純粋に武芸に秀でているというのとは少し違い、その強さは異次元のものだろう……。  我が祖国エルドラニアをはじめ、プロフェシア教を信奉する国々では、悪魔の力に頼る魔導書の使用はもちろんのこと、その所持すらも基本的には禁止されている。  だが、魔導書を専門に研究する修道士──〝魔法修士〟やメデイアさんのように、教会・各国王権から許可を得ている者であればその範疇ではない。  魔導書(グリモリオ)……それは森羅万象、この世のすべての事象を司る悪魔を召喚し、それを使役することで自らの願望をかなえようとする魔術の方法が記された書物である。  許可が必要なだけでなく、狡賢(ずるがしこ)い悪魔との交渉は大変危険なため、それを扱えることだけでもかなりのステータスなのであるが、彼女の場合は占星術や薬学にも長じている上に弓も得意だし、それ以上にもっと何かあるような気がする。  それは、とある用事を言いつけられて、彼女の魔術研究部屋(ラボラトリウム)を訪れた時のことだ……。 「──すいませーん! アスキュール先生からハーブを分けてもらって来いって言われてきたんすけどぉ……」  ドアをノックして声をかけるが、いつまで経っても返事は返ってこない。 「……あれ? 留守かなあ? 失礼しまーす……」  やむなく俺はおそるおそるドアを開けて、部屋の中へと入ってみる。 「……ん!? なんだ? この臭い……?」  すると、室内には紫色の煙が充満し、なんだか妙に甘ったるくて気持ち悪くなるような臭いが鼻をつく。 「…フフフ……フフフフ……ついに媚薬が完成したわ……これをハーソンさまに飲ませば、ハーソンさまはわたしのことを……ああ、いけませんわ、団長! 神聖な騎士団内でそんなこと……グヘヘ…グヘヘへ……」  さらにその煙の向こう側では、仮設の炉にかけた大鍋を長い棒でかき混しながら、修道女姿のメデイアさんが不気味な笑みを薄布(ベール)の下に浮かべている……しかも、なんかヨダレも垂らしてるし……。
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