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出会い(裕義のターン)
絵を仕事にして生きていけたらいいな、なんて夢見ることもあったし、映画や音楽に携わる仕事がしたいなんて思うこともあった。けれど、現実はそんなにうまくいかなくて、ありきたりの生き方になってしまった。
気がついたら、結婚して子どもも生まれて今は焼肉屋さんの雇われ店長なんてやっている。もともとサービス業は性に合っていたみたいで、別に不幸だと感じたこともなかった。
このまま年をとっていくのだろうと、ただ漠然と生きていた、あの日までは。
『バイトの募集をしてるときいたので、応募したいんですが……』
それは、いつものバイト候補の電話だった。なのに、その受話器越しの声が、やけに耳に響いて懐かしささえおぼえた。
「じゃあ、一度、お店に来てもらえますか?」
『わかりました、では……』
それが香絵と初めての会話だった。
履歴書を見たけれど、初対面なのは間違いないらしい。なのに、まるで失っていた自分の半分をやっと見つけたような安堵感は、言葉ではうまく表せないし誰に話しても納得してもらえないだろう。
まだ大学生の香絵に、俺は惚れてしまった……いや、そんな言葉ともまた違う……とにかく一緒にならなければいけないと強く感じた。
自分には妻子があるというのに。
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