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ただ二人でいたかった。
誰にも邪魔されず、二人きりで。
お互いがお互いをずっと探し続けていた、やっと出会えたこの“奇跡”を手放したくなかった。
“私たちが幸せになるために不幸にした人たちがいて、そのことは一生かかっても償いきれない”
そう言う香絵は、俺との生活がどんなに苦しくても泣き言を言わなかった。俺の体が悪くなって働けなくなっても、香絵はずっとそばにいてくれた。
_____なぁ、香絵、もっと早く出会いたかったなぁ……
少しずつ体調が悪くなっていくのが、自分でもわかる。それでも俺は、香絵との時間を失いたくはなかったし、捨ててきてしまった妻や子への贖罪が俺の寿命が短くなることだったとしたら、それでもいいと思った。香絵と離れるのだけは嫌だ。
香絵が仕事に行っている間、本棚の奥からヒラリと何かが落ちてきた。それはどういうわけか、ほとんど視力を失った俺の目でも確認できた。
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