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「うわーん、返してよ、大事なクレヨンなんだから」
痩せっぽちのモヤシと呼ばれた子が、泣きながらクレヨンを取り返そうとしている。
「それならいうこと、聞けよ!」
「わかったから、マユちゃんとはもうあそばないから」
「ぜったいだぞ、ほらよっ、返してやるよー」
ダイスケが投げつけたクレヨンが箱ごと宙に舞って、パラパラと地面に落ちた。見るからに弱いものいじめ。これは見過ごすわけにはいかない。
「ちょっと待ちなさい!なんてことするの!友達の大事なものを投げるなんて」
見かねた私は、二人の前に飛び出した。
「なっ、なんだよ」
ダイスケと呼ばれていた子は、まるでオバケでも見たように腰が抜けたのか、その場に座り込んだ。私は床に散らばったクレヨンを集め、ケースに入れてモヤシっ子に渡した。
「はい、これ、キミの大切なものなんでしょ?」
「え?うん、ありがとう」
「それから、きみ!ダイスケ君だっけ?お友達の大事なもの、そんなふうに投げつけるのはよくないよ。自分の大事なものを同じようにされたら悲しいでしょ?それに友達のマユちゃんのことも。せっかくのお友達なんだからみんなで仲良くしたら?」
ね?と言いながら、立ち上がらせるために手を差し出した。
「うわぁっ、なんだよ、気持ち悪い!!」
ダイスケは私の手をパシンと払いのけると、慌てて走り去ってしまった。
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