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「あのさヒロ君、ここ、どこかな?教えてくれる?」
「ここはお父さんが働いていた鉄工所、今は誰もいないよ。だから僕の秘密の場所にしてる」
「つぶれちゃったのかな?」
「そうみたい。お父さん、一人で遠くに仕事に行ってるもん」
裕義のお父さんは、裕義が子どもの頃家を出て行ったと言ってたっけ。
「それからさ、もう一つおしえて」
「ん?」
「私、どうやらクマみたいだけど、なんでヒロ君は驚かないの?さっきのダイスケ君みたいにさ」
「だって、ここはエブリスタウンだよ?僕の願いがかなったってことなんだよ」
「願い?」
子どもの裕義も何かを強く願ったということだろうか?
「うん、サンタさんにね、友達が欲しいってお願いしたの。だから、来てくれたんでしょ?えっと…名前教えてよ」
「あー、ごめん、私の名前はね……か……」
香絵だと言いかけて、やめた。この先の何年か後に、私は裕義と出会うはずだから、名前は変えておいた方が良さそうだ。
「か………」
「か?」
名前を考えているその視線の先に、古いヤカンが見えた。
「カヤン、そう、私の名前はカヤンだよ」
「カヤン?なんだか外国の人みたい、かっこいいね」
「あはは、そうだね、これからはカヤンって呼んでちょうだい」
「じゃあ、僕のこともヒロヨシって呼んでいいよ、友達だから」
差し出された小さな手を、もふもふの私の手で握りしめた。
「カヤンの手、あったかいね」
「そう?よかった」
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