エブリスタウン

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それから毎日のように、私とヒロヨシはその廃工場で遊んだ。いつも二人だったけれど、私はそれがうれしかった。子どもの頃の裕義を、私が独り占めしているようで。 「今日は、宿題があるんだ」 ヒロヨシは、スケッチブックを取り出して、白いページを広げる。 「何かを描くのが宿題?」 「うん、友達の絵を描くんだ」 「へぇ、誰を描くの?」 「もちろん、カヤンだよ」 「わぁ、うれしいな。可愛く描いてよね」 真っ白のスケッチブックに、茶色と黒を混ぜて人型のような形を描きあげていく。 「ん?ちょっと、そこ違うよ?」 私はヒロヨシの絵を見て、アドバイスをする。 「どこ?」 「ほら、首から直接手が生えてるみたいになってる。人間ってさ、肩があってその肩から腕があるんだよ。ヒロヨシもそうでしょ?」 クレヨンを持ったままのヒロヨシの手を持ち上げて、鏡代わりの鉄板に姿を映した。 「ほら、ね?基本的な形を捉えて描かないと、何を描いたのかわかりにくいよ」 「うーん……」 ヒロヨシは、納得がいかないのか、首をかしげている。 「あのさ、カヤン。人間はそうだけど、ほら見て、カヤンの手は肩というより首から出てるよ」 「あら…、ホントだ」 ヒロヨシが言うように、ぬいぐるみのクマの私の手は肩というより首からつながっているように見えた。 「ま、そういうこともあるよね。あとさ、私はほら、毛の流れもあるんだからそれもちゃんと描いてよね」 いわゆるをして裕義と暮らし始めてから、私は趣味で絵を描き始めた。裕義はプロ並みに絵が上手く、私が描いた絵にあれこれとダメ出しをしてきたことを思い出す。 『まずは骨格、それから筋肉の付き方、動物だったら毛の流れや鳥だと羽の向きも無視しちゃダメだ。基本ができてから初めてデフォルメが許されるんだからな』 _____あれ?待って待って待って!私は裕義に教えられたことをヒロヨシに教えてるの? なんだか頭の中がごちゃごちゃしてきたけれど、そんな小さなことより子どものヒロヨシも大人の裕義も独り占めしているようで幸せだった。
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