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16時35分
今日こそは定時で終われる いや 終わる。
昨日コンペが無事終わり、終電に飛び乗る日々もようやく終わった。
感触は良かったものの、結果は早くても明日以降にならないと分からない。契約を勝ち取ってしまえば、今度はそれはそれで忙しくなってしまう。
藤堂虎太郎のいる営業2課のメンバーは、それが分かっているから、15時を過ぎた辺りから、残業をしないオーラをみんな出していた。
今日ぐらいは定時で帰ろう。
それが口には出さないが、メンバー全員の総意だった。
プルルルル…
「はい 株式会社RMC 営業2課藤堂です。…お世話になっております。先日はありがとうございました。…はい、城崎に代わります。少々お待ちください。」
「城崎課長 ニッポー堂様から1番です。」
コンペの結果か?いや、早過ぎるだろ。このタイミングって事は、感触良かったけど、ダメだったのか?
フロアー全体の緊張感が上がる。このコンペが取れれば、今年の会社の予算クリア確定だ。残業は増えるかもしれないが、ボーナスも期待できるし、何より気兼ねなく年末休みを満喫できる。
「…はい。ありがとうございます。精一杯頑張らせて頂きます。」
受話器を置いた課長が、
「おい、藤堂。コンペ勝ったぞ。よくやった。」
そう言ったのを皮切りに、フロアーにいる全員から拍手が沸き上がる。
今日はいい気分で帰れる。皆にもみくちゃにされながら、幸せに浸っていると、課長が社長を連れてフロアーに戻って来た。
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