『第二部 比翼連理 第二章 約束の残響音に』のあらすじ

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『第二部 比翼連理 第二章 約束の残響音に』のあらすじ

 この作品は、『天と地が手を繋ぎ合うような奇跡の出逢いは、仕組まれた運命の輪環を廻す(第二部 比翼連理 第二章 約束の残響音に)』( https://estar.jp/novels/26159050 )の続きとなっております。  また、物語全体のはじまりは、『天と地が手を繋ぎ合うような奇跡の出逢いは、仕組まれた運命の輪環を廻す(第一部 落花流水 第一章 桜花の降る日に)』( https://estar.jp/novels/26084370 )です。  よろしくお願いいたします。  もと一族であるユイランから『昔の鷹刀』について語ってもらった数日後。ルイフォンは、主要メンバーを集めて会議を開いた。昔のことを話したがらない年寄り連中に、知っていることを洗いざらい吐き出させ、皆で情報を共有するためである。  イーレオはルイフォンの要求に応え、かつて自分とシャオリエは〈悪魔〉であったと告白した。それは〈七つの大罪〉から情報を得るためであり、現在は、縁を切っていることも伝えた。  更にイーレオは、現在の〈七つの大罪〉は、自分が属していた〈七つの大罪〉とは別組織であり、本来の〈七つの大罪〉は瓦解したはずだと言い切った。  それに対し、母キリファの生前の言葉から『〈七つの大罪〉の正体は、王族(フェイラ)の研究機関』だと推測していたルイフォンは、王のための組織が簡単になくなるはずがない、と反論する。  説明を求めたルイフォンに、答えようとしたイーレオが突然、苦しみだした。〈悪魔〉は、王族(フェイラ)の『秘密』を口外すると死を迎える『契約』を交わしており、その警告がなされたのだ。  ルイフォンは大いに焦ったが、エルファンが「お前の言う通り、〈七つの大罪〉は王族(フェイラ)の研究機関だ」と代わりに答えることで、事態は収まった。  イーレオが言うには、先王の暗殺によって、突然、現女王へと代替わりしたため、〈七つの大罪〉は運営がうまく引き継がれずに瓦解したという。それというのも、先王を殺したのは、先王がもっとも頼みにしており、〈七つの大罪〉の運営を一任していた甥だったからだ。  国王の暗殺は重罪だが、甥が王族(フェイラ)であるために、ことは公にはされなかった。甥は病気療養という形で幽閉された。  そして、甥はつい最近、幽閉を解かれ、「女王の婚約者」として表舞台に戻ってきた。故に、甥こそが、現在の〈七つの大罪〉を牛耳っている人物ではないか、という話で、会議がお開きになる――というところで、メイシアが声を上げた。  もと貴族(シャトーア)のメイシアにとって、先王の甥は顔見知りの再従兄妹(はとこ)であった。甥は、理由もなく王を暗殺するような人物ではない、しかも女王が生まれたときから婚約者に内定していたので、権力欲しさに凶行に及んだということはあり得ないと言う。  更にメイシアは、以前、イーレオに「ルイフォンの母、キリファを殺した犯人を知っている」と言われたが、その犯人とは先王ではないか、と問いかける。  殺されたからといって、先王が潔白とは限らない。先王には何かある。キリファの死も無関係とは思えない。だから、キリファの死の真相を教えてほしいと、イーレオに迫った。  しかし、イーレオは、自分は詳しいことを何も知らないのだと答えた。知っているのは、キリファの家にある人工知能〈ケル〉だ、と。 〈ケル〉に話を聞くため、ルイフォンはメイシアを伴い、キリファと住んでいた家に来た。彼は苦労しつつも、無事に〈ケル〉へのアクセスに成功する。しかし〈ケル〉には、キリファの死の真相は話せない、と謝られてしまった。  それでも、メイシアの洞察力によって、〈ケル〉と打ち解けることができた。真相は教えてもらえなかったが、キリファは先王に一方的に殺されたわけではなく、どうやら先王を利用していたらしいことが分かった。 〈ケル〉は、ルイフォンたちに、エルファンに対して犯した罪の告白を聞いてほしいと言ってきた。  四年前。命を懸けるつもりのキリファを止めようと、〈ケル〉はエルファンを呼び出した。しかし、彼が到着したときには既にキリファは殺され、体が持ち去られたあとだった。  残された状況から、エルファンは、キリファは襲われ、連れ去られたと考えた。キリファが亡くなっているなどとは思わず、地の果てまで探しに行きそうな勢いだった。それを止めるために、〈ケル〉はやむを得ず、キリファが殺される映像を彼に見せた。  自分は酷いことをしたと悔いる〈ケル〉に、「真実を教えられてよかったと思えないか」とルイフォンが言い、〈ケル〉は救われる。  調査という意味では空振りに終わった〈ケル〉との邂逅。その報告の会議の場で、リュイセンは「ルイフォンばかりに働かせて、鷹刀は何もしていない」とイーレオに噛み付いた。  リュイセンは、イーレオが〈(ムスカ)〉に対して手ぬるいのは、いったい、どういう見解なのかと問い詰めた。  イーレオは、生前の〈(ムスカ)〉が、彼の妻=イーレオの娘のために『死者の蘇生』技術を作り上げたと言った。新しい肉体を作り、それに保存しておいた記憶を書き込むのだ。この技術によって、現在の〈(ムスカ)〉は作り出されたのだろうと言った。  現在の〈七つの大罪〉は、イーレオへの刺客として〈(ムスカ)〉を作ったのではない。彼の天才的頭脳を、『デヴァイン・シンフォニア計画(プログラム)』に利用するために、生き返らせたのだ。――その説明に、ルイフォンたちは納得する。  イーレオは、現在の〈(ムスカ)〉がイーレオの命を狙うのは、生前の彼との最後の電話のやり取りを恨んでいるからだと思っている。その気持ちは受け止めたい、自分の娘のために尽くしてくれた男だから、と言う。  しかし、リュイセンは、イーレオが見ているのは『過去』。鷹刀の『未来』のために、全力で〈(ムスカ)〉の捜索をするべきだ、と主張した。そして、『未来』のために、イーレオが折れた。  その晩、イーレオがエルファンの部屋を訪ね、ルイフォンの父親はエルファンだと告白した。エルファンは激怒して、どういうことだと迫る。  エルファンとキリファの娘、ルイフォンの姉であるセレイエは、子供のころ、敵対する凶賊(ダリジィン)に襲われた。それをきっかけに、彼女が持って生まれた運命が明らかになり、通常の医療の効かない高熱で死にかけた。  そのとき、キリファは「もう子供は産まない。次の子供もセレイエと同じに違いないから」と宣言した。その誓いのために、キリファはルイフォンを妊娠したことを隠したのだという。  イーレオは過去を語る。  キリファは、鷹刀を出ていこうとしていたところをユイランに気づかれ、イーレオのもとに連れてこられた。非力なキリファが、ふたりの幼い子供を抱えて、まともな生活を送れるとは思えない。イーレオは説得を試みた。  キリファには、エルファンを悲しませたくない、という思いがあった。それならば、イーレオの子供ということにすればどうか、と提案した。落ち着いたころに真実を話せばよいと、安易に考えてしまったのだ。  しかし、人の心はそんな簡単なものではなく、キリファとエルファンの仲はこじれたまま、キリファは亡くなった。イーレオは後悔と共にエルファンに謝罪する。そして、エルファンもまた、自分にも非があったことに気づいたのだった。  イーレオが、今ごろになって真実を話したのには理由がある。〈ケル〉の言動が、キリファの思いを代弁していたから。  そして。  まだ、ルイフォンたちに隠している『生まれながらのセレイエの運命』が、『デヴァイン・シンフォニア計画(プログラム)』に大きく関わっているであろうから――だった。  イーレオとエルファンは、これからの『未来』のために、ルイフォンたちにセレイエのことを明かそうと約束したのだった。
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