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「僕も会えてよかったよ。こたろうの時の気持ちも伝えたかったけど、やっとこれから一緒にいられるんだもん」
「う……うん?」
「まずは自己紹介だよね! 今の僕の名前は大樹って言うんだ。高校一年生だよ。学校は」
「ちょ、ちょちょ、ちょっと待って!」
勢いよく話しはじめた彼に、一旦ストップをかける。
思わず『待て』の指示を出してしまったけど、彼は素直に従ってくれた。
「これから一緒って?」
私の疑問に彼は、きょとんとする。
「だって、イチコちゃん言ったじゃない。『また会おうね』って。それでこうして会えたんだから、また一緒にいたいじゃない?」
「一緒にいたいって言ったって……」
「え? イチコちゃん、彼がいたりするの?」
「それは、いないけど」
痛いところをつくなぁ。彼氏いない歴は年齢だもん。
「じゃあ、僕! 僕、だってイチコちゃんと結婚するつもりだったんだから」
「ええっ!?」
「だってイチコちゃん大好きだもん。優しくて、可愛くて。大人になっても可愛い」
か、可愛いなんて、男の子に言われたことないから、照れるんだけどっ。
「イチコちゃん、大学生だよね? どこの大学? 今日終わり何時? っていうか、今から一緒に行く。送っていく!」
「ちょっっと待ってよ! 君こそ高校生でしょ? 学校遅刻しちゃうじゃない」
「いいよ。イチコちゃんと一緒にいられるほうが大事だもん」
「そんなのダメに決まってるでしょ! ちゃんと出来ない人とは付き合ったりしないから!」
「えぇー……」
しゅんとして、うつ向いた彼。ふふっ。なんか折れた耳としおれた尻尾が見えてきた。
「わかった。ちゃんとする。学校行く。じゃあ、終わる時間教えて? 迎えに行く。もしくは僕の方が遅いなら、僕の学校が終わってからデートしよ」
そんなうるんだ瞳でお願いされると、断りづらいっ。
「デートっていうか、じゃあちょっとだけお茶しようね。私、今の君の事全然知らないし」
「やったーーーっ! 絶対だよ! じゃあまず連絡先の交換!」
さっきのしょんぼりはどこへやら。めちゃくちゃテンション高くスマホを取り出す彼。全身から嬉しさが滲み出ている。
きっと人に話しても信じてもらえない。
だけど、こうして話して瞳を見れば、こたろうだって、私にはわかる。
神様がくれた不思議なプレゼント。
この出会いは、新たなはじまり。
生まれ変わった彼と、これからどんな日々を過ごす事になるのか。少し弾む胸のリズムを彼に悟られないように、鞄からスマホを取り出した。
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