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さっきの男の子の目がまん丸になって、私の事を全力で見つめてくる。
寝てる時にもかわいい子なんだろうなと思っていたけど、起きたらその大きな瞳が印象的。一度会ったら忘れられないくらい。
うん。初めましてのはず。
「やっぱりイチコちゃんだぁーーーーっ!」
勢いよく立ち上がり、私の方へと全力で向かってくる。
やだ、うそ! 怖いんだけど!
なんで私の名前知ってるの?
かわいらしい男の子だったとしてもよ。知りもしない男の子がいきなり私の名前呼んで親し気に駆け寄ってくるなんて怖すぎるから!
ちょうど電車のドアが開いたから、一目散に飛び降りる。とにかく車両から離れよう! 並んでいた人の間を縫って、ひたすら足を進めた。
人の波から外れたホームの端まできて、やっと息をつく。
「ふぅ……。なんだったの?」
動きやすいスニーカー履いてて本当によかった!
結果、改札出口とは反対方向へと進んでしまったけどしょうがない。まだ時間に余裕はあるから授業には間に合う。
そう思って改札へ向かおうと方向転換したら、むぎゅっと強い力で抱きしめられた。
「きゃあっ!」
「イチコちゃん!!」
ぎゅうぎゅうと抱きしめ、ううん、これ絞められてる。
く……苦しい。
「やっと会えたぁー! ずっと探してたんだよーっ」
嬉しそうに言うんだけど、そのたびに力がこめられるから、私はもう窒息寸前。
押しのけて解放されたいのに、力が入らない。
あ、ヤバイ。意識が……。
「え? あ、イ、イチコ、ちゃん? えーー!? イチコちゃぁーーーんっ!」
かすかに彼の叫び声が聞こえた気もするけど、電車が到着する音に混じって、よくわからなかった。
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