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きゃんっ、きゃんきゃんっ。
遠くで鳴き声が聞こえる。
……こたろう?
きゃんきゃんっ!
「……う、うぅん。こたろう、ちょっと待って。寝かせてぇ~」
きゃんきゃんきゃんっ!
「っだから、ちょっと待ってってー!」
「あ! イチコちゃんっ!」
目を開けた瞬間、ふわふわの髪が視界に広がる。
……え!?
よく見ると、さっきの男の子。
ん? 私、横になってる?
慌てて起き上がろうとしたら、ぐいっと強い力で姿勢を戻された。
「ダメ! 急に起き上がったら危ないよ。もうちょっと寝てて!」
……って、これ、膝枕、だよね?
ホームのベンチで、初対面の男の子の膝枕とか、どんな展開!?
頭の中が混乱していると、ポタッと頬に何かが落ちてきた。
見上げると、男の子がボロボロと涙を零している。
「え? なんで泣いてるの!?」
「だ、だって、イチコちゃん、急に倒れるから。僕、ビックリして。怖くてっ」
見た目は高校生だし大きな身体なのに、まるで小さな子供のようにボロボロと涙を零して、腕でゴシゴシと擦り上げる。
そうか、私、倒れたのか。
直前、この子にものすごい力で抱きしめられたのを思い出した。
誰なんだろうな? この子。
全然知らない子なのに、今、こうして泣いている姿を見ると、なんだか可愛く見えてくる。
ふわふわの髪の毛を揺らしながら、一生懸命涙を拭う彼。
思わず、そっ……と、髪の毛に触れた。
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