虹の橋を越えて

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 私の問いに、彼は包み込むような優しい笑顔を浮かべた。 「さっき。イチコちゃん、呼んでくれたよ」 「さっき?」 「目を覚ますとき。覚えてない?」  確か遠くで鳴き声が聞こえた気がして。  無意識だったけど、呼んだのは……。 「こた……ろう?」  小さい頃。うちの家族だった『こたろう』。  ちっちゃくて、ふわふわで。  遊ぶのも一緒。お昼寝も一緒。  一番の友達でもあり、大切な家族だった茶色い子犬。  私が五歳の時、病気で死んじゃった。 「そう。『こたろう』だよ。イチコちゃん。イチコちゃんに会いたくて、ずっと探してた」 「うそ……。そんな事、あるはずない」  死んじゃった犬が、人に生まれ変わるなんて。  そんな事あるはずがない。 「そっか。私、夢見てるのね。さっき倒れて、そのまま今、夢を見てるんだ」 「夢じゃないよ」 「そんなわけないじゃない」 「じゃあ、僕しか知らないイチコちゃんの事話したら、信じてくれる?」 「……え?」  私の戸惑う声を彼は了承と捉えたのか、にっこりと微笑んだ。
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