0人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなとき転機が訪れた。
ある日、国近くのただの畑作業の仕事だった。
その日はいつも通り、畑作業をしていたが、急に雲行きが変わった。
「おい、あれなんだ、、あそこに黒い靄がかかってるだろ」
「なんだあれ、うわあ!」
向こうの畑の方で、同じ労働者の何やら騒がしい声が聞こえてきた。
僕は、そっちの方を見ると、黒いオーラをまとった、鎧を来た人間が、何人かを連れてこちらに来ていた。なんなんだあれは。その鎧人間は、杖のようなものを振りかざすと、肉が熔けて腐った死体が地中から出てきて、労働者を襲っていた。それに気づき、逃げようとした時にはもう、周りの人間も、、そして自分のところにもその動く死体が地中から上がってきて、僕はそいつに足を掴まれた。
「くっ!はなせ!」
そいつに一度足蹴りを食らわせる。怯んだような反応を見せたが、すぐに動きだした。僕は慌てて逃げた。周りでは労働者が次々に襲われている。僕は足を止めず走っていたが、何かにぶつかった衝撃で尻もちをついてしまった。
「なんだ?まだ生き残りがいたのか」
ぶつかったのは、あの黒いオーラをまとった鎧の男だった。その鎧は黒ずんでいて、節々から飛び出す布切れはボロボロだった。
「ちょうどいい、お前で新しい魔術を試そうじゃないか」
鎧兜の隙間から見える目は赤く光り、なにか呪文を唱えると、何やら禍々しい力の渦ができる。その渦を、僕は全身に受けた。
「うがああああっ!」
僕は、死んだ。 あいつに殺された。これまでの人生、何も果たせずにただ生きるのに精一杯でそして、あっけなく死んだ。そんな何も無い人生だった。それを振り返り悔やみ、死んでいくと思ったその時、僕は死体として甦っていた。
「フハハハハ、なんというパワーだ。コレが新しい死霊魔術。一体だけでも、壊滅させられるぞ」
我が物顔で、何か言っているが、僕はどうやら術式にかけられたみたいだ。死霊魔術を掛けられた人間は、傀儡となり、その術者に従うように洗脳され、意識は戻らず、思うがままに動かされる。しかし僕の意識はそのままだった。
そこで食らわす不意の一撃。僕は、奴をグーパンで殴った。
「おりゃあああああ」
「グハアッ!」
この力により、やつの鎧は砕け散り、その場で倒れる。
「グッ、まさかこんな所で、、俺は、俺達はクルベスヒ王国のアイツらに復讐するまでは、絶対にッ...」
何かを言い残して、奴の目の赤い光が消えた。
そして僕の目が熱くなり、それを抑えると、先程まで襲っていた死体達が、こちらに来た。僕がやつから死霊魔術師としての資格を奪い取った瞬間だった。頭がクラクラとしてきて、目眩がして、強い力に耐えきれず倒れ、僕はそのまま眠った。
何時間、いや何日間と経った頃だろうか。僕は目を覚ました。辺りには死体だらけで、僕はその死体を操れた。あれは夢じゃなかったのだ。そんな僕も死体のような見た目をしていて、これでは到底家族に顔向けできないなと思った。
ポケットを開けるとあの時ノアに貰った御札が焼け焦げていた。もしかしてこれが、僕を護ってくれたのかもしれない。この御守りのおかげで僕はアイツに操られず済んだとしたら、本当にノアに感謝したいと思った。僕は、フラフラとクルベスヒ王国まで歩き出した。
最初のコメントを投稿しよう!